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それから、4年後
結局、下手人は見つからず、事件は迷宮入りしていた。
源内も昨年亡くなり、動達は、どうすれば良いのか途方に暮れていた。
動達は、田舎に帰って行った、兄弟子の源兵衛が、最後に言っていた事を思い出していた。
(回想)
源兵衛「縞が殺されたのは、きっとあのせいに違いない」
動達「兄貴、あのせいって?」
源兵衛「師匠は、エレキテルの後に、時を計る機械を作っていたようなのだ。仮にそれを時計という名にしておこう。その時計が、ただ時を計るだけではなく、時を自由に往き来出来るもの、仮にこれを翔時機(しょうじき)という名にしておこう、その翔時機のようなものを作っていたようなのだ。しかも、掌にすっぽり入るくらいの大きさのな………」
動達「へえー、師匠がそんな凄い物を………。知りませんでした………」
源兵衛「結局、師匠は、時計は作ったらしいのだが、残念ながら、翔時機は、試作品は作ったらしいんだが、完成品は作る事には、失敗したらしい。」
動達「それで?」
源兵衛「その試作品が工房にあったはずなのだが、師匠の死後、探してみたが見つからなかった」
源兵衛「縞は、殺されたあの日、握り飯を作って持ってきて、工房の入口に置いて行ってくれたのだが、たまたまあの日工房を訪ねてきた人が、二番弟子から五番弟子の誰かを見た気がするという話も聞いたんだ」
源兵衛「だから、縞を殺したのは、俺たち以外の他の弟子の誰かなんじゃないかと思うんだ。もちろん、(縞が)殺される原因となったのは、そいつが師匠の試作品を盗むのを、縞が目撃してしまったために違いない(ちげえねえ)」
源兵衛「そして、ここからは、俺の勝手な考えだが、おそらく、その弟子の誰かが、盗んだ試作品を元に、翔時機を作る気なんじゃないかと思う」
源兵衛「動達………、もし、気が向いたら、事件を調べてみてくれないかい? そして、真犯人が分かったら、そいつを俺に教えて欲しい。まぁ、………無理はしなくていいぞ。八丁堀でさえ、分からなかったんだからな」
源兵衛「それじゃ、動達、達者でな。あばよ」
動達「兄貴こそ、お元気で………」
………
動達は、深いため息を一つ付いて言った。
動達「兄貴のためにも、何とか手がかりだけでも…見つけねば……」
動達は、事件の手がかりを求めて動き始めた。
第3章につづく
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