離愁

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 その時、俺は女を割と近くで見ることが出来たが、良い印象に変わりなかった服装や背格好に引き替え、顔は然程良くもなく羨ましがる程でも無かった。  男はと言うと、背が高いのは確かだが、遠目だから顔ははっきり分からない。  而も男は女に逃げられた後、欄干に寄り掛かり、川面に向かってがっくりと項垂れてしまったので顔が全く見えない。  俺はせめて最後に抱かせてくれと男が頼んだ結果、ああなったのだろうと想像して男の顔が見えなくても、その哀愁に満ちた背中を見れるだけで一種の満足感を得て、それを中心とした風景が撮りたくなってデジタル一眼レフカメラを再び構えた。
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