7人が本棚に入れています
本棚に追加
出かける準備をして、最終チェックのために鏡の前に立つ。
鏡には活発な少女が映っていた。髪はポニーテールでメイクはナチュラルに。シンプルなTシャツにジーンズ生地のショートパンツを合わせてくるぶしまでの短い靴下を履く。最後にニカッと快活な笑みを浮かべれば、最高の今日の私が完成する。
スマホを開いて、今日の予定を確認した。
今日の彼氏はハルトくん。25歳で幼馴染の男の子という設定だ。今日の私は男勝りなおてんば娘。だけど彼の前ではちょっとツンデレで甘えん坊。
……正直、反吐が出る。好きでもない男にベタベタ触られて、「好きだよ」なんて言われて。そして「私も好きだよ」なんて笑って返す自分が、どうしようもなく気持ち悪い。
だけど私は、こうやって生きていくしかない。ちょっと可愛いだけで他には何もない私には、こうやって自分を売ることしかできないのだ。若く美しい今のうちに、お金を稼がなくてはならない。
「……いってきます」
返事の聞こえない空になった部屋にそう呟いて、私は部屋を出た。
一瞬視界の端に写った、本当の私とあの人の写真から無理やり目を逸らすように。
最初のコメントを投稿しよう!