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「ここ来たの初めてだね!」
「そうだな、お前とは来たことないかも」
この街の男はデートスポットをここしか知らないらしい。もうこれで何回連続だろう?
まあ「初めて」とか言っておけば、だいたいの男は喜ぶので毎回言ってしまう。
「あれなんてどう? めっちゃ楽しそう!」
こうやってお化け屋敷に連れ込むのも、ただお化けに怖がっていればいいだけで、反応が楽だから。
「え……マジで言ってんの?」
微妙な反応。面倒くさいな。
「なんだよ、ハルトは怖いのか?」
「そ、そんなんじゃねーよ! 行くぞ!」
この手の男は単純でいい。軽く挑発すればすぐ思い通りなのだから。
「ハ、ハルト? 絶対に離すなよ……」
「お、おう……任せとけ」
こうやって身体を密着させるのも、相手からの好感度が上がるので効果的だ。最後にもらえるお金も多少だが違ってくる。
いつかあの人が戻ってきたときに出せるお金をたくさん用意しておかないと。そのためならなんだってすると決めた。
あと3歩くらい歩くと、血糊を塗った男が出てくるんだったな。私は小さく咳払いをして、声を整える。
思ったとおり、顔に血糊を塗った男が物陰から現れる。一瞬で男に不快感を与えない程度かつ、その日の女の子らしい可愛げのある絶妙な高さの声を準備する。
そして私は叫んだ。
「きゃあ!?」
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