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ふと、いつか見た番組の映像が脳内を過った。
周りに音が聞こえないように、枕に顔を押し付けて感情のままに叫ぶ思春期の少女の映像。
「それだ」
私は咄嗟に引き出しを開けて分厚めのバスタオルを乱暴に取り出す。そして、顔面に当てて――叫ぼうとして――叫べなかった。視界が真っ暗になると冷静さが顔を出してきて、感情の吐き出し方がわからなくなった。でも、不完全燃焼の怒りはずっと胃の底にあって気持ち悪い。
私にどうしろというの
吐き出す方法を見つけたのに吐き出せない。吐き出したいのに吐き出し方がわからなくてそれで余計苛々して、私は、
ああ、こうしている間にも時間は過ぎる。
もう、行かなきゃ
諦めてバスタオルを下げて時計を見上げる。そこで、私は見てしまった、見つけてしまった。
笑顔でボールを掲げる息子の写真を
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