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その後仕事に行くと、やっぱり喉はガラガラになっていた。同じ職場の主婦の人が、私のあまりの喉の掠れっぷりに「大丈夫?」と凄く心配そうに言ってくれるほどだった。黙っていようかと思っていたが、「貴女は優しいわね、怒っているところなんて想像できない」と常日頃から言ってくる人でもあったので、私は苦笑しながら「実は……」と暴露した。
そしたら、驚いたように目を見開いて、けどすぐに凄く優しい微笑みを浮かべて彼女は言った。
「そういう時もあるわよね。お疲れ様」
肩をひとつ、ポン、と叩かれた。
その優しい言葉が胸にじんわりとしみこみ、私は怒ってた自分が急に馬鹿らしくなって笑ってた。何の変哲もないような言葉なのに、「怒りは持って当たり前」と言ってもらえたみたいで心が救われた。
後悔のない怒り方をできた気がした。
――意外と、呪いの人形の類もそうやって生まれたのかな
本人にぶつけられないどうしようもない怒りのぶつけ場所。
それを探して、最善だったのが写真や人形だったのだとしたら。
直接ぶつけて犯罪を犯してしまうよりは案外ありなのかもなぁ、と、私はどこか晴れやかな気持ちで思うのだった。
fin
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