ママの焼いたクッキーは最高

2/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
ドアが開く。 「お財布をわすれちゃったわぁ。あら?ベッキーどこに行っちゃったの?ベッキー?」 ママが私を探している。 私はここよ、ママ。 私が自分の部屋を出ると、ママは安心したように微笑んだ。 「自分のお部屋に居たのね?あら?キッチンの戸棚が開いてるわ。おかしいわねえ。出る前はきちんと閉まっていたはずなのに」 やばい、気付かれてしまった。 ママがキッチンの棚に近づいていく。たぶん、クッキーが減っていることに気付くはず。このままでは、ママに叱られちゃう! ママを悲しませたくない。 私は、思わず大声で叫んだ。 「ワン!ワンワン!」 驚いたようにママが振り向いた。 「あら、ベッキー。どうしちゃったの?」 ママの気を引くことに成功した。 次は、哀れに鳴くのだ。 「クウーン」 「まあ、ベッキー。寂しかったのね。かわいそうに。よしよし、いい子いい子。ママはすぐに帰ってきますからね」 気を引いている間に、なんとか戸棚のドアを閉めることができた。 一通り、ママが私を撫でたあとに、思い出したように振り返る。 「あら?戸棚のドアが閉まってるわ?変ね、先ほどは開いてたと思ったのに。 あ、それより、財布財布」 ママはバタバタと財布を取りに、ベッドルームへと走って行った。 私はほっと胸を撫で下ろす。 ママはきっと、買い物から帰ったら、クッキーが減っていることに気付くだろう。でも、大丈夫。私に戸棚を開けられるはずもないって思ってるだろうし、1番に疑われるのは、戸棚を開けることのできるトーマスだから。 いい気味。トーマスはまだしゃべることができないから、ママに叱られても反論できないもんね。 1時間くらいして、ママとトーマスが買い物から帰ってきた。 そして、ママがキッチンの戸棚を開けて首を傾げる。 「あらぁ?クッキーが減ってるわ?これはどういうことかしら?トーマス、昨日焼いたクッキー、いつ食べちゃったの?」 ママはトーマスがつまみ食いしたと思っている。トーマスは、お菓子を食べるとご飯を食べなくなるから、いつも戸棚に隠しているのだ。 「ダメじゃない。おやつの時以外にクッキー食べちゃったら。ご飯が入らなくなっちゃうでしょ?」 ママが困った顔をして、トーマスに小言を言っている。 もちろんトーマスはわけがわからなくて、キョトンとしている。 トーマス、いつも身代わりに叱られてくれてありがとう。ごめんね、でもやめられないの。 ところが、トーマスが突然私を指差して 「ベッキー」 って言ったのだ。 ウソ、トーマスがしゃべった!しかも、私を犯人だと知っている。 「今、ベッキーって言ったの?トーマスがしゃべったわぁ!凄いじゃない、トーマス。でも、初めての言葉がベッキーだなんて」 ママは複雑な顔をして笑った。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!