4人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「ベッキー、ちょっとお買い物してくるわ。いい子にお留守番しててね」
そうママが言い残して軽く私をハグしてくれた。
やさしいママ。大好き。
私は、レベッカ。みんな私のことを親しみをこめてベッキーって呼ぶの。
ママがお出かけして、ちょっぴり寂しいけど、これは願ってもないチャンス到来。私はママを笑顔でお見送り。
完全にドアが閉まり、ママの車が発進するエンジン音を聞いてから、慎重にキッチンの戸棚の前に立つ。
ママがクッキーを隠す場所なんて、私にかかればすぐに見つけだしちゃうんだからね。
ママの焼くクッキーは最高。私はママのクッキーの虜なの。
それなのに、ママは私にクッキーをくれない。
理由は私が虫歯になったことと、私が太りすぎたから。
ママは私のことを心配して、今はダイエット食ばかりを私に食べさせるの。
はっきり言って、ダイエット食はまずいから嫌い。
でも、ママは言うの。
「ベッキー、ママはいつまでもあなたと一緒に居たいの。だから長生きしてほしいの。あなたの健康のためよ。我慢してちょうだい」
確かに最近の私は、体重が増えすぎて歩くのもままならない状態だけど、ママのクッキーを一生食べられないなんてイヤ!
弟のトーマスはずるい。私よりあとに生まれたくせに。
ママのクッキーを好きなだけ食べられるのだ。
ふん、あんただって今に私みたいに太っちゃったらダイエット食になっちゃうんだからね!でも、今のところ、トーマスは痩せている。悔しい。
どうして私だけが?そんなの許せない。
私は、そーっと足音を忍ばせる。
そして、戸棚を開けた。
ほらね、やっぱりあった。匂いですぐにわかっちゃうんだからね。
隠したって無駄。
ああ、やっぱりママの焼いたクッキーは最高。
おいしい。幸せ。
その時、表で車のエンジン音がした。
ウソ!ママが帰ってきた。
きっと何か忘れ物をしたんだわ。
私は慌てて、自分の部屋に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!