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智矢とは幼稚園からの幼馴染で、おれの初恋の相手。それからずっと、おれは智矢に片想いをしている。
修学旅行や部活の合宿、お互いの家に泊まりに行ったりして、寝顔は何度も見たことがあった。でも、もちろんいつも見ていただけ。
少しだけ……。自分にそう言い聞かせて、脂肪の付いていない平らな頬にそっと触れる。さらりとした汗で、しっとりと濡れた頬が、手のひらにぴたりと吸い付いた。
――自制心が吹っ飛んだ。
大量の血液が、心臓からどばどばと一気に放出される。もう、止められそうになかった。智矢の唇に張り付いたおれの視線は、そこから全く動こうとしない。
いけないことだという背徳感が、おれの欲を余計に煽っていく。
触れたい。智矢の、唇に……。
親指だけを動かし、ぎこちなく唇をなぞった。
指が滑っていくようなさらさらとした唇は、中心部分だけが、わずかにごわついていた。指に引っ掛かるようなその感触が、愛しくて、嬉しくて、胸がぽわっと温かくなった。
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