初キス

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 智矢の……。智矢の、唇……。  おれの目には……、頭の中にも、もう智矢の唇しか映っていなかった。  喉から手が出るって、きっとこういう感じなんだろうな。小さく開いたおれの口から、智矢に向かって見えない手が伸びていく。  触れたくて、触れたくて、仕方がなかった。  二つの唇の距離が、少しずつ縮まっていく。肌に、唇に、智矢の体温を感じ、目を閉じる。  唇の表面に、ちょんと智矢の唇が触れ……押し当てた。ぷにゅりと潰れていく、智矢の薄い唇。  温かい……。柔らかい……。智矢の……、大好きな智矢の……唇。  連打する太鼓のように、心臓がものすごい速さで脈を打っている。いけないことをしているはずなのに、嬉しくて、嬉しくて、たまらなかった。    このまま、時間が止まってしまえばいいのに……。    そうすればおれは、このあとおそらく……いや、確実に持つことになるだろう罪悪感を持つことなく、ずっとこの幸せな気持ちのままでいられる。  でも、そうならないことは分かってる。どれだけ望んでも、そうならない現実。  心臓をわし掴みされたみたいに、胸が苦しくなった。
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