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離れていく唇から、智矢のぬくもりが消えていき、夢からゆっくり醒めていく……。
薄く開いた瞼の隙間から、智矢の姿がだんだんはっきり見えてくる。それと同時に、自分に向けられている何かの存在に気付き、それを強く感じ、それが何であるか分かった瞬間、目を見開き――智矢の視線とおれの視線がぶつかった。
はっと大きく短く吸い込んだ息は、どこか違うところにでも入ってしまったのか、喉の辺りで変な音を鳴らした。
智矢は寝ていたはず。その目はしっかり閉じられていたはず。それが今、しっかりと開いた瞼のあいだから、おれに強い視線を向けている。
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