初キス

7/8
前へ
/75ページ
次へ
 離れていく唇から、智矢のぬくもりが消えていき、夢からゆっくり醒めていく……。  薄く開いた(まぶた)の隙間から、智矢の姿がだんだんはっきり見えてくる。それと同時に、自分に向けられている何かの存在に気付き、それを強く感じ、それが何であるか分かった瞬間、目を見開き――智矢の視線とおれの視線がぶつかった。    はっと大きく短く吸い込んだ息は、どこか違うところにでも入ってしまったのか、喉の辺りで変な音を鳴らした。  智矢は寝ていたはず。その目はしっかり閉じられていたはず。それが今、しっかりと開いた瞼のあいだから、おれに強い視線を向けている。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加