辺境の森の薬屋さん

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「で、村長。話とは何でしょうか?」  青年は集会所の奥にある村長室で大きな体を椅子に沈める村長と机を挟んで今日呼ばれた理由を聞いたが、その前に村長が椅子に座れと机の前にある椅子を指差し、座ることを促した。 「いやなに、この暑さで村のみんながへばってきて、薬師のイーサンに何か暑さに効く薬草か薬はないかと思ってな」  青年ことイーサンもその事には気にかけていた。 ロンの村は夏は涼しく、冬も雪は多く降れど風がこれも森に遮られるのでそこまで寒くなく割りと過ごしやすい気候なのだ。  それでこの異常な暑さになれていない子供や老人を中心に体調を崩すものが増えていき、病院がないこの村で唯一の医療機関である薬師のイーサンに白羽の矢がたった。 「一応体の熱を取る薬草はありますが人数分はないですし、取るとなるとシーラ山に行かないとですが、今は魔物たちが子育てで気が立っている時期で危険です」  この時期は春で妊娠した魔物が多く、その子供を守るために魔物たちは気を張っているので比較的穏和な魔物でさえも人を襲う事例があり、その時期は冒険者や大きな町では騎士団などがその対応をしている。 「まあそうなんだよな。シーラ山も主が代わったのか出てくる魔物が強くなっているって報告が有るしな」  村長は丸太のような腕を組み、冒険者でも雇うかとか金がなとかう~んと唸るだけだった。 「解りました。その件私が受けとります。どのみち山にしかない薬草が切れそうだったので」  待ってましたと口角を上げて笑う村長は 「イーサンならやってくれると思っていたよ。この村で唯一の冒険者だからな」 「冒険者ならキャロだってそうじゃないですか」 「まぁ、あいつはな一応資格はあるが初心者だからな。そういう意味ではお前が唯一魔物とやりあえるって事だな」  村長の娘キャロも一応冒険者試験を受けて、今年晴れて冒険者になったが最低ランクの初心者、この森の魔物では太刀打ち出来ない。  せめてランクDまであれば最低限自分を守れるんだけどと考えていた。 「3日後にシーラ山に行ってきます。それと報酬ですがユキハリ草の設定価格から3割増しで良いでしょうか?」  突然の発熱や体の中に籠った熱を取るのに使うユキハリ草、町での需要も高いのと卸す業者が少ないので十枚一束で銀貨1枚と薬草のなかでは高い。 「分かった。報酬は用意するが、こう言ってはなんだが気を付けろよ」  村長は机の引き出しから1枚の紙を取り出しイーサンの前に出した。 「えぇ分かってますよ。行ってきます」  羽ペンで自分の名前を書いた紙を村長に返すと村長室から出ていった。
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