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パンツがない!
「ぎゃあああ!パンツがないいいい!」
温泉は阿鼻叫喚の有様だった。当然私も叫んでいる。なんといっても、ここは温泉。脱衣所で風呂から出てきたところ、お風呂に入った女性達全員のパンツが突如として消失したのだ。
ロッカーを覗いても、棚の下を覗いても、カゴをひっくり返してもパンツがない。ないないのない。一体何が起きたというのだろう。まさか、下着ドロでも出たのだろうか。この温泉、使う人の平均年齢は相当高いのだけども。私も五十過ぎたオバチャンなんですけども。
しかし、その予想はすぐに違うと分かった。壁が薄い隣の部屋からも絶叫が聞こえてきたからだ。男風呂からも、“パンツがない!”の大合唱である。下着ドロにしては守備範囲が広すぎるし、ついでに節操もなさすぎるというものだ。
――これは一大事だわ……!何か、とんでもない野望が発生しているに違いない!
私は一緒に風呂に入ったオバチャン仲間達と頷き合うと、パンツを履かないままスボンを押し上げた。ミステリーマニアの意地の見せ所である。この謎、死んだばーちゃんの名にかけてこの前園愛子が絶対に解き明かしてみせようぞ!真実は、きっと一つだけだ、多分だけど!
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