343人が本棚に入れています
本棚に追加
「へぇ……まぁ、分かる気もする……なぁ?」
さっきまで捲し立てていた表情を一変させ、
ニヤニヤ意味ありげな笑いを浮かべている。
「ふーん……アイツも所詮は生身の男か」
「だから、その……」
意味を聞き返そうとした時だった。
「こんな所で何やってんですか?
通行の邪魔ですよ、先生方」
真後ろで心地良いトーンの声の主、藤宮允人本人が立っていた。
心臓がドキリとする。
「ひっっ!!藤宮允人っっ!!」
何か見てはいけないモノを見たと言わんばかりに
叫びながら粂部は姿を消してしまった。
(なんか色々と気の毒な奴)
「っと……ごめん、藤宮」
「アイツには気をつけろ」
すれ違い様に言われた言葉に一瞬耳を疑う。
「え?」
「どうかしましたか?先生。
次1年の授業でしょう?遅れますよ」
視線を向けた藤宮に穏やかな表情でニッコリ微笑まれた。
「うわ!?ヤベッッ!!」
時計を見ると職員室に戻って1年の教室にダッシュで行って
ギリッギリといったとこか??
廊下走ると評価に響くけど遅れるより数万倍マシだ。
「じゃな、ふ、藤宮」
「廊下は走るの厳禁ですよ、那賀代先生」
「今回だけ見逃せ~~~!」
「今回だけですね」
背後から聞こえる穏やかな笑い声は
さっきのとはまるで雰囲気の違う声色。
(やっぱさっきの聞き違い……だよな)
奇妙な違和感を無理やり振り切って
俺は1年の教室に急いで向かった。
最初のコメントを投稿しよう!