その瞳で

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「へぇ……まぁ、分かる気もする……なぁ?」 さっきまで捲し立てていた表情を一変させ、 ニヤニヤ意味ありげな笑いを浮かべている。 「ふーん……アイツも所詮は生身の男か」 「だから、その……」 意味を聞き返そうとした時だった。 「こんな所で何やってんですか? 通行の邪魔ですよ、先生方」 真後ろで心地良いトーンの声の主、藤宮允人本人が立っていた。 心臓がドキリとする。 「ひっっ!!藤宮允人っっ!!」 何か見てはいけないモノを見たと言わんばかりに 叫びながら粂部は姿を消してしまった。 (なんか色々と気の毒な奴) 「っと……ごめん、藤宮」 「アイツには気をつけろ」 すれ違い様に言われた言葉に一瞬耳を疑う。 「え?」 「どうかしましたか?先生。 次1年の授業でしょう?遅れますよ」 視線を向けた藤宮に穏やかな表情でニッコリ微笑まれた。 「うわ!?ヤベッッ!!」 時計を見ると職員室に戻って1年の教室にダッシュで行って ギリッギリといったとこか?? 廊下走ると評価に響くけど遅れるより数万倍マシだ。 「じゃな、ふ、藤宮」 「廊下は走るの厳禁ですよ、那賀代先生」 「今回だけ見逃せ~~~!」 「今回だけですね」 背後から聞こえる穏やかな笑い声は さっきのとはまるで雰囲気の違う声色。 (やっぱさっきの聞き違い……だよな) 奇妙な違和感を無理やり振り切って 俺は1年の教室に急いで向かった。
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