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「あ~いや、普通の生徒さ。
ただ……まぁ、ちょっとな」
何とも歯切れの悪い言い様にますます興味が湧く。
なまじ別の意味で気になってるだけに……
「問題があるとかではなくてな……
その……少し相手を試すような所があるんだ。
どの程度の人物なのか自分のものさしで測るというか、
アイツの価値観で計られて見合うヤツなんてそうそういないのに」
「……ひょっとして麻巳、藤宮と何か個人的にある?」
珍しく微妙な雰囲気の違いに気付いた自分が
それだけ藤宮の名前に敏感になっているからとは
思いたくないけど。
「実は俺と藤宮は親同士が知り合いで
アイツが高校生の時、家教してたんだ。
ハッキリ言って俺なんて全く必要無かったけどさ
だから、あくまで校内では先生と生徒だが
プライベートでは付き合いがある」
「へぇ……そうだったんだ」
意外も意外な情報だった。
「それより毘聿、
お前やっぱり藤宮から質問攻めとかあってないんだな?
……アイツ、案外露骨だな」
(やっぱり?って何だろ。
……良いように取れば好意的。
裏を返せば聞くにも値しない……さて、どっちだ?
ここは気分良く流そう。わざわざ傷つく必要ないもんな)
それに――
生徒はアイツ1人じゃない。
全員平等に思わなければと考えを改めようとするものの
教師も人間である以上私的な感情を持ってしまう事は
どうしようもない。
だからこそ言動には充分気を付けよう。
表に出さなきゃ何を思ってようと自由だからな。
ふと顔を上げると麻巳が複雑そうな表情で
俺を見ているのに気付いた。
「何?麻巳」
「……いや、何でもない」
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