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「犬?…いや、なんだコイツは。」
雨が降る寒い夜、俺はコイツに出会った。
捨て犬か?ゴールデンレトリバーの子犬みたいだ。赤金色の綺麗な長い毛に覆われ、目はクリッとしていて可愛い。
お座りをしていると思っていた。抱きかかえようと近付いてみると、コイツには前足も後ろ足も存在していないことに気付いた。だからといってグロテスクな見た目をしていたわけではない。元々、顏と胴体しかない「そういう生き物」だった。
俺はこのよく分からない生き物に興味が湧いて、連れて帰ることを決めた。
家に帰りすぐさまインターネットで動物の画像を片っ端から検索してみたが、結局コイツが何なのか分からなかった。
とりあえず帰りのコンビニで買ったドッグフードを与えてみた。食べない。
俺は自分のために買ったカツ丼のカツを一切れ与えた。やはり食べない。
野菜を与えても、魚を与えても、どれも食べようとしない。
もしかしてコイツは大金持ちの家で飼われていたのだろうか。こんな庶民的な食事は受け付けないということなのか?
「はぁ。毎日高いエサなんて用意できないぞ。」
大学を卒業してからずっとフリーターをしている俺にそこまでの余裕はなかった。
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