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「わが社のジュースが売れ行きが悪いのは、君ら営業の努力が足りないからだ! この前、テレビで見たんだが、今の若い方は写真シール機? ああいうのが好きだそうだ。宣伝効果を狙って、自販機にお客様撮影機能を付けたのを、導入することにする!」
フェルミン社の狭い会議室では、所狭しと、営業部社員たちは、身を寄せ合うように、壁際に立たされていた。物怖じしながら、社長の大きな声に頷いていた。
フェルミン社は、創業百年を迎えるジュースメーカーである。そして、ジュースの売れ行きが落ちているのは事実であった。巷での知名度も、業界大手に比べて、最近は低下する一方だ。
社員の意見を拒む、ワンマン社長に、誰も異論が挟めず、新型自販機の導入は決定した。
後発の缶ジュースメーカーに自販機設置率、ジュース業界でのシェアは、とうの昔に抜かれてしまっていた。
社長は、思いつきで動くタイプであった。起死回生の手段として、同業他社がしていない、奇を狙うことにしたのだ。
自販機メーカー複数に、ボタンを押したお客が撮影する機能を備えることにした。その場でケータイを取り出す。複数の自販機メーカーに見積書を持ってくるよう、電話していた。
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