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傍か見れば、人が変わったように見える俊吾さんだけど。
夜は変わらずだった・・・
「一日…何度も『LINE』して来るけど・・・仕事に支障はないの?」
「・・・ないよ・・・」
「心配・・・」
「・・・心配か・・・杏南がそうして、俺のコトを気に掛けてくれているんだと思うと嬉しいよ」
「・・・」
彼の愛は束縛心の塊だった。
この邸宅に来て、外出したのは彼の会社訪問と実家に荷物を取りに行った一度っきり。
出社する彼を見送り、迎えるだけの平日。
休日は彼と共に邸宅で過ごす日々が続いた・・・
元々、オーバーワークの彼。
休日は仕事に備え、休息する。
それが彼の方針だった。
「今度の休日は何処かに行きたないなぁ」とさりげなくアピールしてみた。
「・・・俺と?どこに??」
「何処にって・・・ウィンドショッピング・・・食事に…映画とか・・・私達ってデート一度もしてないじゃない??」
「デート?デートは恋人同士がするものだ。俺達は夫婦なんだからデートする必要はない・・・ショッピングならネットで出来る。
食事も邸宅に三ツ星レストランのシェフを呼べば、店と同じ味を堪能できる。
今、上映されている映画は無理だけど・・・地下のホームシアターが映画鑑賞は可能だ」
「・・・」
「杏南は今まで・・・そうやって無駄な時間を過ごして来たのか?」
「無駄って・・・」
「・・・違うか?」
「俊吾さんから見れば、無駄かもしれないけど・・・」
私は語尾を濁し、黙った。
「・・・」
彼は何も言わなくなった私をジッと見て、考え込んだ。
「・・・わかった・・・何処かに行けばいいんだな・・・行きたい場所は杏南が決めてくれ」
「何処でもいいの?」
「ん、あ・・・なるべく人が居ない場所がいい・・・」
「えっ!?」
「・・・俺は人混みが苦手なんだ・・・」
「・・・わかりました・・・」
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