プロローグ*奪われた日常

5/9
前へ
/265ページ
次へ
私はベットから出て、陽当たりの良いバルコニーに続く両扉の前に配置されたロココ調のアンティーク椅子に腰を下ろした。猫脚の丸テーブルには美しい花の絵が描かれていた。私は高価なカップのラベンダーのハーブティを口に含んだ。 こんな風にゆったりとした時間を過ごすのは久しぶりだ。 「その俊吾様とはいつ会えるの?」 「俊吾様は出社されているので、面会は夜になるかと思います」 「会社勤めなの?」 「「サイバーリバティ」と言う会社は知ってますか?」 アメリカに本社を持つ外資系IT企業。 それが「サイバーリバティ」 テレビコマーシャルでその名前を訊かない日々はない。 「巨大IT企業でしょ?」 「俊吾様はその「サイバーリバティ」日本支社の代表取締役を務めております」 「社長??歳は??」 「御年二十七歳です」 私よりも六歳年上・・・ 「・・・」 「これが俊吾様の写真とプロフになります。 貴方のデータは全て俊吾様はご存知です」
/265ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2440人が本棚に入れています
本棚に追加