プロローグ*奪われた日常

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夜の帳が降りる頃。 私は黒崎さんが用意したドレスに着替えさせられた。 「やはり・・・AIのお勧め通り、似合っていますね。そのドレス」 「・・・このドレスを選んだのもAIなの?」 「さようで御座います」 「・・・何でもかんでも、AIの意見を取り入れるのね・・・」 私は呆れるしかなかった。 黒崎さんは出窓の外に目を遣り、呟く。 「・・・俊吾様がお戻りなられました・・・お迎えに行きますよ。杏南様」 私の方を振り返り、そう言った。 私は黒崎さんに背中を押され、エントランスに向かった。 「お帰りなさいませ。俊吾様」 「あぁ」 冷たく響く低い声。 切れ長の瞳も声と同じで冷徹な光を宿し、とても冷たかった。 「杏南様」 「・・・貴方が俊吾さん?」 私は俊吾さんと初めて顔を合わせた。 写真で見るよりも実物の方がもっと良く超がつくイケメンだった。 「・・・そうだ。俺が長谷川俊吾・・・ 君の夫だ・・・」 「AIが決めた相手と結婚するなんて・・・おかしいわよ」 「パンばかり焼いている庶民には理解し難いかもしれないな・・・」 「父の焼くパンを馬鹿にしないで・・・ウチのパン屋は地元では有名なんだから・・・」 「ふん」 俊吾さんは冷たい目で私を見つめる。 「俊吾様・・・その・・・」 「・・・俺に付いて来い。杏南」 「・・・」 私は黙って彼の後を付いて行った。
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