プロローグ*奪われた日常

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私が寝ていた部屋は彼のプライベートルームだったらしい。 俊吾様は性急にネクタイを緩め、Yシャツの首許のボタンを外した。 「貴方のデータは見ました。貴方も私のデータを見たんでしょ?」 「ああ」 「結婚は好きな相手とするモノ。 好きでもない相手とするもんじゃないわ」 「・・・このご時勢、パン業界は一大ブームとなり、乱立している。 君の父親だって・・・君には言わないだけで影で苦労しているぞ」 「!?」 「俺が用意した金に最初は戸惑い、娘を売り渡すのを拒んでいたが、最終的に金を受け取った。君は金で俺に買われたんだ」 「えっ?」 「だから…君には戻る場所はない。おとなしく、俺の妻となるんだ」 「・・・お父さんが私を貴方に売ったの??」 「・・・俺と結婚すれば、毎日時間に追われるコトはない。 君は自由に自分の為に時間が使える」 「・・・」 「いい話だろ?」 「・・・結婚は好き同士するもんだって言ってるでしょ?」 「俺からすれば、結婚は唯の契約。 ビジネスのようなもんだ。 君は俺の子を産む大切な道具だ。 悪いようにはしない。 君が望むなら、結婚式もしてやる」 「・・・貴方・・・人としておかしいわ」 「・・・セレブだけど…育った環境が悪かったようだ・・・」 「・・・」 「俺は奥の部屋で着替えをするから・・・少し待ってろ」
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