鶴の昔話

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鶴の昔話

その奇妙な店は、緩やかな坂の途中にあった。 古い木造建築で平屋建て。 店の前を流れる水路は苔むした煉瓦(れんが)積み。 その水路の上に架った、短いコンクリートの橋を渡った先に、店の入口がある。 店主はきっと、店の外観とよく似た古狸のようなジイ様。 誰もがそう思って店の前を通り過ぎるだろう。 しかし、その古びた店内に人の気配はない。 磨りガラスの窓から射す西陽が、主のいない店内に濃い影を落とす。 値打ちがあるのかどうか分からない古道具(ふるどうぐ)は、ただ退屈そうに木製の棚に並んでいるばかりだ。 店から続く四畳半(よじょうはん)雪見障子(ゆきみしょうじ)が、忘れられたように少し開いている。 そこから望む庭の池には、迫る夕闇と比例するように丸い光が(にじ)み始めていた。 「つまらないわ」 主がいれば、決して姿を表さない西の(はなれ)縁側(えんがわ)鏡子(きょうこ)漆塗(うるしぬ)りの手鏡を握り、庭を眺めている。 今日は、柊平(しゅうへい)夜魅(よみ)どころか、あの刀も近くにいない。 (まも)(かがみ)としての役目を、この数十年で1番発揮している。

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