レッスン1

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  「ひっく。もう、かれひなんか、いらないのらーっっ」  行きつけのホルモン屋で、ドン、とお猪口(ちょこ)をカウンターのテーブルに叩きつけた。空になったお猪口に徳利からお酒を注ごうとして、無い事に気が付いた。  おおーい。酒が無いぞ、酒が! 幾らぶんぶんと強く振っても、徳利から酒は出てこなかった。 「ありゃりゃ。千恵ったら、また酔ってるよ」  悪友の向井小晴(むかいこはる)が私の様子を見て、ため息を吐いた。おっさん系の私と違って、彼女は可愛い系だ。  ふんわりとしたカールかかった茶色に近い髪。ロリータ系と言っても過言ではない。同じ三十六歳なのに、下手すりゃアラサー(二十代)に見える。畜生。私だってコスプレしたら、まだ年齢より若く見えるぞ!  それより、小晴はチャーミングなパッチリ大きな目元に、ぶるんとした大きな唇が魅力的。  しかし、しかーしだ。私と同じ、腐女子であーる。  
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