レッスン4

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  「百枚!? 謝って貰ったし、別にもういいんじゃないですか? 可哀想ですよ」  顔をしかめて言われたので、思わず力説した。 「南さんは甘い! 彼女達は、会社の信用問題にも関わる、犯罪まがいの事をしたのよ。下手すりゃ裁判沙汰よ? それだけの事をしたの。訴えられないだけマシだと思わなきゃ。こういう悪事は、簡単に赦しちゃいけないわ。本当ならクビにしたい所だけど、このご時世、クビにするのも一筋縄ではいかないの。一度雇うと、会社はどんなにダメ人間でも、その人間の人生と共に責任を負わなくちゃならない。だから正直、私は派遣というポジションは、楽に稼いで、責任も無くて、あまり良く思っていなかったの。偏見もあったわね。それについては、本当に反省したわ。南さんは派遣だというのに、会社の為だけでなく、貴女自身に責任感もあって、他の人間のカバーまで黙ってやってくれて、第一、お客様に対する真摯な姿勢が素晴らしいって思ったの。貴女のお陰で商品の発送がきちんと間に合ったし、私たちの方が見習わなきゃ、と感じた程よ」  そんな南さんは、当然、と言わんばかりの顔で、キリッと言ってくれた。 「今日の出荷は、お客様との約束ですから。今日必ず出荷するって、私が自分で約束したのです。約束を反故するのは、私のポリシーに反しますから」  南さん、カッコイイ!  約束を反故するのは、私のポリシーに反しますから――何かのアニメキャラみたいな台詞だわ。惚れちゃう!  ああ、いけない。気を抜くと、すぐにヲタク要素で物事を考えてしまうこの思考、何とかならないかしら。
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