レッスン5

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 社員三名(ここは実名を記載した)が一人の派遣社員を妬み、故意的に梱包ミスを誘発し、会社に損害を与える事案が発生。しかしその優秀な派遣社員のお陰で危機は回避。顧客にはお詫び品を同梱の上、正しい品を発送済。派遣社員と社員三名の話し合いは完了している次第。詳細は月曜日再度連絡致します――このように報告欄にまとめて書き、売り上げ、発送件数、その他記載事項全ての欄を埋め、報告書をメールで本部宛てに提出した。  金曜の夜だし一応解決した事案ではあるので、月曜日に上層部からお偉いさんがやって来て細かい事情説明を求められるだろう。ああ、憂鬱。考えただけで憂鬱。  これって、完全に監督不行き届きだった私の責任だもんねぇ。減給案件かもしれないわ。下手すりゃ部署異動(左遷)させられちゃうかも!  営業足りていないとか言っていたものねぇ。いきなり『営業やれ』とか言われたらどうしよう。  重い溜息を吐いてパソコンの電源を落とした。明日は休みだから、尾田君と解散後も呑んだくれようかしら。  ふうーっと大きなため息をひとつ漏らし、よし、と気合を入れて立ち上がった。  忘れずに香水を首筋等に振りかけておいて、待ち合わせした正面玄関に向かうと、尾田君は既に待っていてくれて、長い脚を組んで壁に凭れてポーズを取っていた。 「ごめんなさい、待たせちゃったかな?」 「俺も来たところです。待ってませんよ」  爽やかねー。これなら、独身彼女無しで遊び人という定義は頷ける。
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