2832人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺とどっちが好きですか?」
おもむろに彼女の隣のツンツン頭で眼鏡をかけた若いイケメン君が、ホルモンを美味しそうに食べる女性に尋ねた。
「ホルモン」
女性が悩みもせず即答したので、思わず笑いそうになった。いけない、いけない。
彼女たちは、カップルじゃないのかもしれないわね。男性の一方的な片思いなのかしら? でも、この二人どこかで見た事があるのよ。うーん。作者のどこか別作品で見かけたのかもしれないわ。
「酷いですね。じゃあ、俺もホルモンと一緒に和歌子さんに食べて貰おうかなぁー」
眼鏡君がめげずに和歌子さんと呼ばれた女性に笑いかけたが、彼女に「お断りしまーす」と笑顔で断られていた。
まあー頑張って、眼鏡君!
「はい、生ビールお待ち!」隣の漫才もどきを横目で見ていたら、頼んだ生ビールがやって来た。「お、千恵ちゃん今日も来てくれてありがと! あっ、昭一郎も一緒?」
「ええ。彼は会社の同僚なの。知らなかったんだけど、お互い常連だったってワケ」
この店を切り盛りする大将は、山岸豪(やまぎしごう)君と言って、背の高い尾田君と並んでもひけを取らない長身で、爽やか三十歳。
この店は親父さんの代からの開店で、創業三十年程になる。豪君は五年くらい前から店を手伝っていて、最近は焼き場にも立っている。店を任されることが多くなった。
鼻が高く、笑うと目が無くなる程に目が細いのが特徴よ。
最初のコメントを投稿しよう!