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「そうなんだよ、豪。これは運命かもしれない」
真顔で言う尾田君。冗談でも恥ずかしくないのかしら。私の方が赤面しそうだわ。
「昭一郎、調子いいことばっかり言ってたら、そのうち泣かせた女に刺されるぞ」
「大丈夫。円満で別れているから。お互い様だし」
うわー。良く言うわー。こんなの絶対お断りよぉー。
「だったら昭一郎、邪魔すんなよ。俺、千恵ちゃん狙いだから」
そうだった。最近小晴が付き合ってくれないから、渉の愚痴言って一人で呑んだくれていたら豪君に、俺とつき合わない、って言われたんだった。
酔っ払いを慰める冗談だと思っていたのに、はああ。豪君、何も尾田君が横にいる今、そんな事言わなくてもいいじゃない。
「えっ。豪、諏訪さん狙いなの? そっかぁー」
「昭一郎、応援してくれよ」
「ヤダ」満面の笑みで尾田君が断った。
「そんな事言わずにさ、頼むよ」
「ヤダ」
「ケチ」
・・・・豪君と尾田君は、似たようなタイプなのかもしれない。
「豪君、気持ちは嬉しいけど、もう当分彼氏は要らないわ。それにね、前の年下彼氏との別れが最悪だったから、年下はもうこりごりなのよ。ごめんなさい。今から尾田君に仕事の相談があるの。プライベートはまた今度ね」
話が進まないから、やんわり遠ざけた。
もしこれで付き合って、ダメになったらもう『ヤマギシ』のホルモン食べられなくなるじゃないの!
私にとってはそっちの方が困るのよっ。
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