Ⅰ.珈琲

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次の日の朝。今日は晴天だった。 それは良いものの、夏から秋に近づいている季節でもあるから、どこか蒸し暑かった。 私はどう答えを出せば、正解なんだか未だに分からなかった。 断れば、私は未練みたいに彼への好意はもやもやと残る。 けど「はい」って言えば、いつかどちらも悲しむって思ってしまっていた。 すると、樹から連絡が来た。 『今日さ、暇だったりする?』 『おはようございます。んー、午後だったら空いてます。どうかしたんですか?』 『分かった、んじゃあ下北沢の駅で三時に待ち合わせでも大丈夫?』 『大丈夫です!分かりました👌』 これは、デートというもの?? 初めて異性の人から誘われて嬉しいと共に身だしなみを揃えなきゃという思いが急にでてきた。 普段使うことのなかった茶系のスカート、黒のセーター、少しヒールのある靴。 どれもすべて私に似合うのか分からなかったけど、全身黒よりマシだろうと心の中で唱えて、学校に行った。 そして案の定、近くの席にいた友人からめっちゃ驚かれた。 そりゃそうだろう。 全身黒で、いつもボーイッシュな服装なのだから。化粧なんていつも耽美メイクだ。 「結衣さん………彼氏でもできた??」 「ち、ちがうよ!少しは頑張らないとなーって思っただけだから!」 何故か恥ずかしくなって、声がでかくなってしまった。 周りはぽかーんという顔をしてしらけていた。 最悪。 授業が始まっても、樹の事で頭がいっぱいだった。 思い出しては照れ、忘れたと思いきや、また思い出して照れての繰り返しだった。 人生初の経験だった。 こんなこと、今までに無さすぎたから、自分がもう分からなくなって、顔が熱くなる。 (こんなの初めてなんだってば…) 授業が終わり、集合時間の30分前に下北沢駅に着いてしまった。 バンドの町と言ってもいいくらいの雰囲気を醸し出しているこの場所に、今日の私みたいな服装はいない。 みんなギターを背負ってたり、ボーイッシュコーデだったりと。 私が着いてから数分後に樹が来た。 「えっはやくない!?ごめん!もう少し早く来てれば…」 「こちらこそすいません!何故か早く来てしまって…。」 いつもと雰囲気が違かった。スーツ姿の樹じゃなくて、私服だったからかもしれないけど。 駅から少し歩くと商店街のような通りがある。いつも一人で行っていたところに今は樹がいることに驚きが少しあった。 「そういえばなんだけど、バンド組んでるんだよね。だから見せたくて。」 「ふぇっ!?そうだったの!?早く教えてくださいよ!因みに何を??」 「んとね、ギターボーカルですねぇ。なんだとおもった?笑」 「ベースかと思ってた…。」 「ベースは…できないかな笑」 驚きしかなかった。 まさかバンド組んでいたなんて。 しばらく歩いて地下にあるライブ会場に着いた。 受付カウンターの横の壁にあるポスターには、樹の名前が書かれていた。 どうやら人気みたいで、少し天の上に感じてしまった。 中に入ると既に観客が並んでいた。 多分、私のライブよりも倍以上ある気がする。 私は周りをずっとキョロキョロしていた。 辺りの照明がきえ、暗くなって、一気に観客の声援が響いた。 そしてステージに光が照らされる。 樹がいた。本当にいた。 夢みたい。 いつも目の前で大人ぶった珈琲を飲んでいる樹が、今は全然違う。 息の合う演奏、そして透き通った声。 何もかも素晴らし過ぎて見とれていた自分がいた。
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