ガーディアン 二

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ガーディアン 二

「で、どうやってガーディアンを探す?」  私達は頭を抱えた。 「私は、ラウディアンの根源的な成り立ちについてよく知らないんだけど......十三人のレインボーを作り出したのは、何故?」  まずは、そこから考えねばならない。それ以上でもそれ以下でもなく、何らかの根拠があるはずだ。 「高次元(ハイアラーキー)-マスターを模したというなら、何らかの示唆がそこにあるわけよね......」  Dr. クレイン=イーサンは、しばらく考えていたが、ひとつのホログラフィーを映し出した。 「ラウディスの神話的な発想だが......、マスター∞《インフィニティ》の下には四人のアセンテッド-マスターがおり、四大元素を司ると言われている......。そして、その下には六人の使徒がおり、それぞれが六つの色のエネルギー-レイを司ると言われている。」 「六芒星(ヘキサグラム)と十字《クロス)ね。でも、そうするとガーディアンも聖者もひとりずつ足りないわ」  私は、神聖幾何学の図形を思い描いた。 「六つの光線(レイ)を重ねると、クリアになる。中心(センター)にその象徴がおり、六つの(カラー)のエネルギーの集約、クリアホワイトの存在がいる。基底はディープ-マゼンタだ。」 「ミーナだわ......」  イーサンは黙って頷いた。 「そして、四大元素.....地、火、風、水を象徴するガーディアンがおり、中心に『世界(ザ-ワールド)』を象徴するガーディアンがいる。」 「四大元素によって世界が構成されている......てことね」 「そして、マスターΩ《オメガ》は、その『世界』の根源的存在、究極(エターナル)だ。」  ここまでは、私の母星、フェリー星の教義とあまり変わりはない。 「で、イーサン。あなたの流れはどの元素を象徴するガーディアンなの?」 「『水』だ。人間―Human ― の基礎物質(ベース)は『水』だからね 」  イーサンは、少しはにかんだように笑った。―だから、医者なんだよ......と。 「いるとすれば......」  イーサンは、ホログラフィーのラウディスの古文書を捲りながら、頭を巡らせ、ある頁に目を止めた。 「『風』のガーディアンは『真理』を、『地』のガーディアンは『力』......これは『存在』と言い換えてもいいな、生命力のことだ。『火』のガーディアンは、『気力』...『情熱(パッション)』を司る」 「『水』なあなたは、『精神』『感情(メンタリティ)を司るわけね」 「そういうことだ。病は『気』からだからね。人間―Human ― の健康には、特に『火』と『水』のバランスが大事だ」 「話が逸れてるわよ、ドクター」  私とイーサンは、顔を見合わせて苦笑いをした。イーサンの長い指が次の頁を捲る。 「 可能性としては、『風』のガーディアンは、なんらかの研究機関にいそうだな。『地』のガーディアンは.....大地と関わるところ、農業施設か?」 「サマナにあるの?」 「西に植物園がある。研究用だがね」 ふぅ~ん、と私は頷いた。 「『火』のガーディアンは?」 「おそらくは、『軍』.....だな。」 「そうね......」  構成は、わかった。が、まだひとつわからないことがある。 「ラウディスのマザーコンピューターが、六芒星(ヘキサグラム)十字(クロス)を模して作られているのは解ったわ。でも、六芒星(ヘキサグラム)、ミーナの位置からマスターΩ《オメガ》に至る縦のエネルギーライン......一番、大事なセンターの中心にいるガーディアンは?......世界(ザ-ワールド)の司るエネルギーは何なの?」 イーサンは、一瞬、口ごもり、そして改めて発声した。 「『(ラブ)』......だ。」 『(ラブ)』......それこそが、この星に一番、必要なもの。この星が失ってしまったもの。.......ビジョンで見たその存在は、眼を瞑り、身を縮こまらせていた。彼(彼女)こそこの星を甦らせるもの、『負』を『正』に、『哀しみ』を『怒り』を『喜び』に変えるもの。マスターΩ《オメガ》を目覚めさせるもの......。 「そのガーディアンは、どこにいるの?」 勢いづいて言う私に、イーサンは哀しそうに言った。   「いない......」 「え?」 「いないんだよ、アーシー。.....『(ラブ)』のガーディアンは、もうひとりのマスターΩ《オメガ》なんだ。双子だったんだよ。......だから子どもを作ることはできなかった。」  『(ラブ)』のガーディアンは「マスターΩ《オメガ》の低次体(マインド)」として扱われ、奉り上げられていた。マスターΩ《オメガ》の恩寵を人々に与える『巫女』のような役割を果たしていたという。 ―それは、つまり......―  私はミーナに与えられた虐待を思い出した。......あれは『模倣』だったのだ。マスターΩ《オメガ》が『降臨』してからずっと行われてきた、忌むべき慣習だったのだ。 「彼女を...『(ラブ)』のガーディアンを見つけ出して、彼女を目覚めさせるの。......でなければ、マスターΩ《オメガ》は目覚めない!」  私は思わず立ち上がっていた。イーサンが眉をひそめる。 「どうやって?......彼女(彼)の末裔はいないんだぞ?」 「ミーナよ。ミーナが知ってるわ!」  私はフェリーナの教義を思い出した。 『三位一体(トリニティ)』......。マスターΩ《オメガ》と『(ラブ)』のガーディアンとミーナは一体なのだ。  地と天と人―Human ― が愛和して 、調和する時に、真の平和が訪れる。  ただ、それには......『最後の審判』を受けねばならない。神に『七つの大罪』を暴かれて、裁かれるのだ。  そう、七人の聖者=犠牲者は、『七つの大罪』を暴かせないための封印だった。マスターΩ《オメガ》の力を完全に機能させない、そのための装置だったのだ。 ―人間―Human ― は欲望の動物なんだ......―  イーサンの言葉の苦さを改めて噛みしめた。
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