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本当の両親
父は立ち上がるとリビングの収納の扉を開けて右手で何かの袋を取り出した。そしてその収納の上に飾っている『写真立て』を左手に持つと再びソファーに腰を降す。
「理紗、この『写真』を・・」
父は私に『写真立て』を渡してくれた。
何度も見たその『写真立て』には、二枚の『エコー写真』が収められている。一枚はハガキサイズの物で、もう一つはその半分くらいで少し焦げがあり『写真』の下側に黒い文字で『Lisa』と書かれているものだ。
「それは?」
凛太郎が『写真立て』を覗き込んだ。
「これは私が母のお腹に居る時の『エコー写真』よ」
凛太郎にその『写真立て』を渡す。
「二枚の『写真』が在るんだね。へぇー、この時から名前、決まっていたんだ」
凛太郎が柔らかな表情で『写真』を見つめている。
私も改めてその『写真立て』を見た。私の二枚の胎児の『写真』は私が母のお腹の中で育った証だったが、でも私の金髪や蒼い瞳は何故?
父が右手に持っていた袋をテーブルの上に置いた。中を覗くと焼け焦げたいくつかの物が見える。
「理紗。お前は私達の本当の子供ではない。お前の両親は・・二十二年前に交通事故で亡くなった」
「えっ?」私は再び目を見開いた。
小さい頃から何度も両親に問いかけたその疑問。でもこれまでは一切の真実が両親から語られることは無かった。
「その交通事故で私達も本当の娘を喪った。その『写真立て』の二枚の写真の一枚は私達の本当の娘の物。そして小さくて焦げている方が、理紗、お前の『エコー写真』だ」
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