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君が本音を話してくれたことは、とても嬉しかった。だから今度は、私がもう一度勇気をもって話す番だと思った。
「私、去年に知り合った男性に、最近まで剣道を教えてもらっていたの」
「花火大会で一緒にいた人?」
「うん。今も仲がよくて、時々遊びに行ってるの」
「そうなんだ。その人のことが好きなんだね?」
私は頷く。
「うん。好きだけど、どうしても彼の気持ちを受け入れることができなかった」
「どうして?」
「九郎君のことが忘れられなかった。私の中の片隅にずっと九郎君がいて」
「今はどう?」
「今でも分からない。九郎君も好きだけど、正平君も好きなの。彼はずっと私の側にいてくれて、ずっと私の力になってくれた。彼と一緒にいると、幸せな気持ちになれる。自分でも最低でズルいと思ってる。心の弱い人間だと思ってる。軽蔑されても、おかしくないと思ってる!」
涙を流しながら最低な発言をする私に、君は優しく微笑んでくれた。
「軽蔑なんてしないよ。それに正直に言ってくれてありがとう、天宮さん。本音を包み隠さず言ってくれた君はズルくなんかないし、君は強いよ。だって、あの日の自分を乗り越えたのだから」
「でも・・・」
「僕はね、自分の気持ちを君に伝えることができたから十分満足してる。だから何も気にせず、自分自身の気持ちに素直に従って選択すればいいよ」
「ごめんなさい、九郎君」
「もう謝らないで」
君の優しさに、余計に涙が溢れた。
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