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「だからさ、紗季さんがわたしに謝る必要なんてどこにもないんだよ」
「……」
「……それにさ、本当に謝らないといけないのは紗季さんじゃなくて、わたしのほうなんだよ」
「なんで?」
「……わたしだって、わたしだって紗季さんの気持ち知ってたのに、それなのに勝手に裏切られたって思って……」
「そんなこと」
「そんなことあるよ! わたし紗季さんにずっと嫉妬してた。紗季さんがいつも先輩と一緒にいるって考えるとすごいもやもやしてた。今だけじゃないの。ずっと……ずっとそう思ってた。紗季さんが先輩の前に現れたときからずっと。いつか紗季さんに先輩を取られちゃうんじゃないかってそう思ってた。だから紗季さんが転校しちゃったとき、わたし悲しいって思う前にホッとしてたの」
「……」
「今だってそう。紗季さんがこの街に帰ってきてくれて、久しぶりに連絡くれて、いっぱいいっぱいわたしの話聞いてくれて、わたしがいつも先輩の話するたびに、「うん、そうだね」「うん、大丈夫だよ」って励ましてくれて、本当なら紗季さんだって先輩のこと好きなのに、自分のこと棚にあげて、卑怯だよ!」
「ひ、卑怯……!?」
「卑怯だよ! なんでそんなに優しいの!? なんでそんなにわたしの心配ばかりしてるの!? なんでそんな風に笑っていられるの!? ねえ、なんで? なんで!?」
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