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それを知ってか知らずか、真衣奈はここに来るのをやめない。何かにつけては、
「先輩が心配だから」
とか、
「どうせいつもコンビニの弁当ばかり食べてるんだから、たまにはちゃんとしたもの食べないとダメだよ」
なんてお前は俺の母親か、と言いたくなるようなことを言ってくる。それでも真衣奈がここに来るのを黙認している俺はやっぱり甘いのかもしれない。
「で、今日はなんの用だ? 空き巣に入ってもめぼしいものなんかないぞ」
俺は肩に担いていたカバンを下ろしながら釘を刺す。余計なものを見られたくないからだ。なのに返ってきた言葉は、
「こんな家に金目のものがあるなんて思ってないよ。それとも人に見つかったらまずいものでもどこかに隠してあるのかなぁ?」
そう言って取り出したのは有名な映画タイトルのDVDケースだった。あの中身は確か……、
「……真衣奈、お前その中見たのか?」
「見てないけど先輩がどこになにを隠していたかぐらい予想つくよ。いいんじゃない? 先輩だって年頃の男子なんだし」
ニンマリといやらしい笑みを向けてくる真衣奈に、両手を上げて降参のポーズをとることでこの話は終りとなった。
「あ、そうだ。先輩ご飯食べた?」
「バイト先から直で帰ってきたからまだだ」
言いながらテーブルの上を見ると、真衣奈の参考書とならんで山盛りのそうめんが用意されていた。もちろん用意したのは真衣奈だ。ちゃっかり二人分用意されているところを見ると、最初からここに居座る気でいたらしい。
「さ、夕御飯食べよ。わたし先輩が帰ってくるのを待ってたからお腹すいちゃった」
真衣奈が山盛りのそうめんに箸を突っ込むと、ごっそりとそうめんの山が崩れた。
「ん〜、おいしい!」
リスのように頬をふくらませた真衣奈はご機嫌な様子。もたもたしていたら俺の分まで食べられてしまいそうな勢いだった。
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