再会

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 毎年この学校では学園祭が行われていて、部活以外でも出し物をしないといけない。俺がいたクラスは去年、この街の歴史なんていう誰が得をするのかわからないような出し物をして、あまり楽しい思い出がなかった。その反動からか、今年は何か大がかりなことをやりたいと、その年のクラスの出し物はプラネタリウムを作ることになった。ちなみに今年は大がかりなことをやろうと言いだしたのは他でもないクラス担任も勤めていた祐介さんだ。  クラスでプラネタリウムを作ることに決まったが、誰も星のことには全く詳しくない素人の集まりばかり。そこでクラスで唯一、というよりは学校内に唯一、天文部に所属している俺に実行委員として白羽の矢が立ったというわけだ。  実行委員に決まった日から俺はプラネタリウム制作に取り掛かることになった。  けれど、一口にプラネタリウムを作るといってもこれが簡単じゃなかった。  まず、星の配置やら、見える星の光の加減、舞台装置となる投影機の作成や星を映し出すためのスクリーン、その他もろもろのことを考えたりすると気が遠くなりそうな気分だった。  そんなある日。  その日もいつものように積み重なった課題を一人、部室棟の奥にある天文部部室とは名ばかりの、通称物置小屋で片付けている時だった。  ガッシャーン! とけたたましいほどの音を立てて部室の窓の一枚が、唐突に割れた。思わぬ出来事に作業の手を止めて何が起こったのか考えてみるけど、こういう時はたいてい頭がうまく働かない。せいぜいわかったことは窓ガラスを見るも無残なガラス片に変えたのが、たった一球のソフトボールが原因だったってことだ。  俺の拳よりも大きなソフトボールは思ったよりもずっしりとした重量感があった。そのせいか体育の授業の時にでたらめなフォームで投げて、クラスで下から三番目の順位をありがたく頂戴したことを思い出した。というより当たったら死んでいたかもしれない。  すっかり風通しのよくなった窓からグラウンドを見下ろすと、主犯格らしいソフトボール部の連中が上を見上げてため息を吐いているのが見えた。このあとで先生たちに怒られることを考えたらご愁傷様としか言い様がない。  とりあえず散らばった窓ガラスを片付けてから、出来れば忘れていたかった学園祭の準備に取り掛かる。けれど手を動かしてみても動かすばかりで、作業が進むことはない。一度途切れた集中力は思わぬ来客でもある白球と同じく、あてのない彼方へと飛び去ってしまったようだった。  ふぅ……と、一息吐いて手を止める。すると机の上に置いてあるソフトボールに目が止まった。  そういやこれ返しに行かなきゃな。そう思っていたところに珍しくこの日二番目の来客があった。  ドタドタと騒がしい物音のあと、バーン! と開かれた部室のドア。  そして一言、 「あ、頭大丈夫ですか!?」  これが俺と紗季のファーストコンタクトだった。
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