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「あ、流れ星」
「え? どこどこ?」
「ほらあそこ」
指さすがそれも見えていたのは一瞬で、流れ星はあっという間にその姿を空の彼方へ消した。
「あーあ、流れ星見たかったな」
「残念だったな」
「残念どころじゃないよ。流れ星を見ることが出来たら絶対に願い事を言うって決めてたんだから」
紗季が頬を膨らませて残念がっていた。
「流れ星なんてまた見える。ほらまた」
「え? あ! ……あーあ……せっかく見れたのに……」
ガバっと起き上がったが、瞬きをする間に消えた流れ星に願いを告げることは叶わなかったようだ。
ゆるゆると起こした体を地面にあずけると「チャンスはまだあるから」と開き直ることにしたようだった。
「流れ星に願い事なんて迷信だろ」
「ハカセって星が好きな割には現実主義者だよね」
「ロマンチストの方がよかったか?」
「んー、まぁ今夜は月が綺麗ですねぐらい言えるようになれば上出来かも」
「道のりは遠いな」
それからお互いしばらく口を開くことはなかった。話題がなかったわけじゃない。もしかしたらこのどこか穏やかな空気を壊したくなかったからだ。
星に混じって動く光。一瞬、流れ星かと思ったが、よく見たら地球の周りを回っている探査衛星だった。けれどそう思ったのは俺だけじゃないらしく、紗季がはっとしたような顔をしていたが次にはなーんだとがっかりした顔をしていたのが何よりの証拠だった。
そういえば、と思う。すると俺の心を読んだのか紗季が話しかけてきた。
「ねぇハカセ」
「なんだ?」
「さっきさ、流れ星が見えたときにわたしが願い事を言うって言ってたじゃない」
「願い事? ああ、そういえばそんなこと言ってたな。それがどうかしたのか?」
「ハカセはさ、わたしの願い事がなんなのか気にならないのかなって」
「別に気にしたことはないな」
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