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本心と建前を半分づつ混ぜた言葉ではぐらかす。
「遠慮しなくていいんだよ。ほら聞きたいんでしょ?」
「いいよ。それに願い事って人に言ったら叶わなくなるって教わらなかったか?」
「そうかもしれないけど……ほら、こういうのって少しは気にしてもらいたいじゃない」
「そういうものか?」
「そういうものだよ」
なんだか無理やり納得させられたような気がする。とはいえ、気にならなかったわけじゃない。せっかく教えてくれるっていうのだからここは素直に聞き従うことにした。
「それじゃあ、お前の願い事ってなんなんだ?」
「もったいつけた割には大した話じゃないんだけどさ、これって願い事っていうよりは希望かな」
紗季がそれまで開いていたまぶたをそっと閉じる。
まつ毛が長いな。それが今の素直な感想だった。
『またこうやってハカセと星を見にこれますように』
これが紗季の願いだった。
なんだか気恥しくなって紗季の顔を見れない。もしかしたら顔が赤くなっていたかもしれない。なんだよそれ、と冗談めかして笑い飛ばそうと思ったが、
「うわー! 恥ずかしい! わたしなに言ってんだよ!」
紗季に先手を打たれてたまらず「本当にな」と息を吐くに留めた。
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