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~プロローグ~ 二人の夜空
「きれい」
紗季がそっと言葉を呟くたびに形のよい唇から白い息が漏れた。
頭上にはどこまでも続く果てのない濃紺色の夜空。その中には大小様々な星ぼしが散りばめられ、その一つ一つが宝石のように優しく輝いていた。
あと少しで訪れる年の終わりを感じさせる十一月、俺と紗季は誰もいないスキー場の駐車場で二人して寝そべりながら星を眺めていた。
「ねぇ、あの輝いてる星はなんていう星?」
紗季が一つの星を指差す。
「あれはシリウスだ。シリウスはおおいぬ座の一つで近くにはこいぬ座をなしているプロキオンもある。ほら、あそこに三つ並んでいる星があるだろ? あれがオリオン座。それでオリオン座のベテルギウスとシリウス、それとプロキオンをつなげると冬の大三角形が出来るんだ」
「じゃあ、冬の大三角形があるってことはもしかしたら夏の大三角形もあるの?」
「そうだな。冬はシリウス、ベテルギウス、プロキオンの三つだけど、夏はベガ、デネブ、アルタイルの三つが夏の大三角形。ちなみに七夕で出てくる織姫と彦星はベガが織姫でアルタイルが彦星。その間にあるのが天の川だ」
得意げに話すと同じように駐車場に寝転んだ紗季が首だけを横に向けて、
「さすがものしり博士だ」
なんて嬉しそうに白い歯を覗かせて笑っていた。
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