第3章:ギロチン賭博

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360度の大観衆と歓声(かんせい)が目に飛び込んできた。 太古の昔に奴隷同士を闘わせたであろう 円柱闘技場、その舞台中央に 私は立たされていた。 足元には血の海が広がっている。 私の右隣にあるギロチン処刑台には 首の無い罪人の亡骸(なきがら)が横たわっており それを軍人二人が抱えながら 持ち去っていった。 置き去りにされた白髪の男性の頭部が 地面に転がり私の顔を見つめている。 観覧席の最上段には皇帝陛下が座られていて その下には5人の法務大臣が座っている。 無機質で死神の様な顔をしていた。 私の命乞いを聞いた後 大臣達が右手の親指を上げれば救命され 逆に親指を下げれば処刑の合図。 大臣5人全員の親指が上がらなければ 罪人は処刑されてしまう。 罪人が救命されると判断した観客は 指定された袋にマゼッタを入れて係員に渡す。 罪人が救命される確率は約2% 賭けた金額の100倍が観客に返ってくる。 処刑されれば賭けたマゼッタは全て 帝国の税金となり没収される。 戦争による犠牲者を導き出す公式を発見した オルガナ帝国の天才数学者が確率学から 考案した悪魔の賭博ルールは国民を熱狂させ 賭けに負けて全財産を失ない 奴隷に没落する国民が続出するほどだった。
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