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あれは粉雪が舞う冬の寒い朝だった。
人買い商人の馬車が私を迎えに来たのは
「ごめんね…お母さんを許して」
そう言って母親は私を商人に引き渡した。
それが最後に見た母親の記憶だ。
女だと知られればどんな目に合うか
分からない。
母親のせめてもの親心から私は髪を短く切り
男の成りをして売られたのだった。
以来私は帝国の奴隷として鉱山で
マゼッタを掘り起こす労働を課せられた。
朝日が昇ると1日の労働が始まり
日が沈むまでマゼッタを荷車に積んで
山の麓まで運ばされる。
手や足は擦り切れて血が滲んだ。
夜になると奴隷達は各々眠りにつく。
狭い洞窟の中で寝る者もいれば
外で寝る者もいた。
僅かな食糧しか与えらず
空腹に耐えらなかった私は
毎晩鉱山に面した海を眺めながら
一夜を過ごした。
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