第2章:マゼッタ

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月明かりに照らされた美しい水平線は 遠くまだ知らない世界を私に 想像させてくれた。 海の向こうには私が見た事もない 生物、民族、風景が広がっているに違いない 世界の果てを見てみたい… 幼い頃に亡くした宗教学者だった 父親の言葉を思い出す。 (この世界の果てには神が治める理想郷(ユートピア)がある。 お金に困る事も飢える事も人々が争う事もない 心清らかな人間だけが辿り着ける楽園がある。) 此処(ここ)ではない何処(どこ)かへ… 理想郷を想像しながら毎晩の様に水平線を 眺めていた私に話し掛けてくれた 男の子がいた。 深い緑色の瞳に(つや)やか黒髪のその子は アニスという名前だった。 薄汚れた服を着ていながらも どこか気品があり元々は高貴な 身分だったに違いないと私は思った。
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