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アニスはとても純粋で優しい男の子だった。
私達はすぐに仲良くなれたし
私は彼の事が大好きだった。
でも彼は私が理想郷の話をすると
決まってこう言うのだ。
「理想郷なんて何処にもないよ…」
そう呟く彼はいつも寂しそうだった。
鉱山に来てから初めて冬を迎える頃
アニスは私に秘密の計画を持ち掛けてきた。
「鉱山に雪が積もる時期になると
毎年凍死する奴隷達が出始める。
不衛生な労働環境から
恐ろしい伝染病だって蔓延する。
まして君は女の子だ。
気付かれたら酷い仕打ちを受けるに違いない。
僕と一緒に鉱山から逃げよう」
アニスは採掘したマゼッタを盗み
隠し持っていた。
それを鉱山警備をしていた軍人に
賄賂として差し出す事で
私達は鉱山から逃げ出す事が出来た。
軍人も皆、生活に困窮していた。
オルガナ帝国のお金による競争社会は
格差を生み、国の資産の90%を約5%の
富裕層が独占していた。
この国の経済は崩壊している。
アニスは私にそう教えてくれた。
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