第2章:マゼッタ

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鉱山の(ふもと)へと逃げる途中 アニスは自分の身の上話を語ってくれた。 オルガナ帝国の大臣だったアニスの父親は お金による競争社会をただ一人批判した 人物だった。彼の父親は言った。 「競争社会は経済が永遠に発展する事を 前提としているが、それはあり得ない事だ。 人間は万能ではない。今より優れた物を 未来永劫(みらいえいごう)発明し続ける事など出来ないし 経済の発展が止まり国民がどんなに働いても マゼッタを手に入れられなくなる日が 必ずやってくる」 皇帝の怒りを買った彼の父親は 大臣の身分を剥奪(はくだつ)された。 生活出来なくなった彼の家族は バラバラになり、アニスは奴隷として 売られる事になったのだった。 でも彼は父親を恨んではいなかった。 「お父さんは正しい事を言ったんだ。 僕はお父さんを誇りに思う」 アニスは私にそう語ってくれた。
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