一人だけ心中

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一人だけ心中

一人だけ心中    目が覚めると、私の体は病院のベットに横たえられ、それを囲んだ家族はめそめそと泣き倒していた。  見事、私は自殺に成功したようである。そして、成仏に失敗したようである。    それから2年が経って、あの娘はずいぶん元気になった。教室ではよく笑っているし、流行映画で後腐れなく泣くようになった。  けれども、私は見逃さない。  あの娘の目の下のクマ、虚空を見つめる間、眠れない夜。  来世にかけて一緒に死のうと毒薬を煽ろうとしたその少し前、私はあの娘の錠剤をよく似たビタミン剤にすり替えた。  未練がましい私は、それでもあの娘には生きていてほしいと思ってしまったから。  こんなに苦しませてしまうくらいなら、大人しく心中してしまえばよかったのに。    その日からずっと、これからも、私はこの世を彷徨い続ける。  
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