のぞき穴

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のぞき穴

   この戦争でもっとも人を殺した敵軍の司令官が女だと知ったとき、私は大いに興味をそそられた。  認めよう、それは狙撃兵として従軍してる人間が持つべき以上の好奇心だ。  暇があれば彼女の戦績(またの名を我らの敗戦記録)を漁り、無味乾燥な文字列からその人となりや考えや思想を読み解こうとした。    初めは同族意識だと思っていた。  こんな時世ではあるが、女性兵士はまだまだ少ない。だから、彼女と自分を重ねているのかと思った。  でも、ふつふつと沸き起こる殺意が、それを否定する。  そもそも下っ端狙撃兵の私と、敵国まで名が知れ渡る司令官では重ねるも何もない。    ただ、同じ戦場に立つ女として一目見てみたい。  そして、叶うならば彼女を葬り去るのは私でありたい。    だから今日も森の中で私は待ち続ける。  きっともうすぐ、彼女はスコープの穴の向こうに現れる。
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