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「――と言うことで、お好きにどうぞ」 ブルーのストライプシャツの第一ボタンを外し、緩めた翔琉は口の端をニッと上げそう告げる。 俺たちは、お互いに服を着たままキングサイズのベッドの上にいた。 これって……もしかして、俺が翔琉を脱がしていくってヤツなのだろうか。 いつも翔琉が俺にしてくれるように、今は俺が翔琉を――。 途端に俺は酷い緊張感へと苛まれ、息を呑む。 クスリと翔琉は笑い、こちらをじっと見つめた。 「どうした颯斗、俺が浮気していないか身体に確かめないのか?」 そう言って、強引に俺の手を取ると自身の胸へ引き寄せる。 「俺がいつも颯斗にしているように、シャツのボタンを外すんだ」 酷く困惑していた俺にそう指示する。 指示を受けた俺は、おずおずとその貝ボタンを上から一つずつ外していく。 グレーの瞳がじっと見下ろしているせいか、俺の指先はいつもより上手く動かず、ついモタモタしてしまう。 ようやく最後までボタンを外し終えた俺の眼前には、ストイックに鍛え上げられた翔琉の美しい肉体が露わとなる。 胸板……厚い。 何度見ても、同じ男として「羨ましい」以外の言葉が浮かばないその体躯に、俺はほうっと見蕩れてしまう。 「視線が熱いな」 グレーの瞳を眇め翔琉は告げる。 「俳優なんですから、熱い視線で見つめられるのは馴れてるじゃないですか」 見蕩れていたことを誤魔化す様に、俺は口を尖らせながら言った。 誤魔化すどころか、見蕩れていたことを肯定する台詞だということに俺自身は気が付くこともなく――。
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