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「何、あからさまにがっかりしているんだ?」
敏い翔琉が、すぐ様俺の異変に気が付き指摘する。
「して……ません」
翔琉に頬を触れられたままの俺は、力なくそう言った。
「――もしかして、期待……した?」
直球勝負の言葉に、再び俺は酷く赤面する。
「……してません」
口ではそうは言っても、潤んだ瞳と上気した俺の頬が「そうだ」と肯定してしまう。
「相変わらず、素直じゃないな」
その言葉にぐうの音も出ない俺は、眉根を寄せ俯く。
確かに、もっと素直に欲しいものが欲しいと言えたなら――。
可愛げのある恋人でいられたなら――。
こんな回りくどいことにはならず、今頃たっぷりと愛されていたのかもしれない。
自己反省していたところで遅く、翔琉はこう告げた。
「だったら、浮気チェックを兼ねて自分が期待したことを今すぐ俺に実践してみなさい」
「え?」
小さく驚きの声を俺は上げる。
それって……どういう意味なんだ?
俺が、翔琉に――期待したことを実践?
俺が翔琉を……押し倒して良い、ってことか?
その画を想像し、俺は大きくかぶりを振る。
「さぁ、まずは俺に何されることを期待した?」
困惑する俺をリードする様に、翔琉は尋ねた。
「何、って……その」
翔琉の言葉通り、キスされその大きくて逞しい身体に押し倒されることを想像していた俺は、思わず口を噤んでしまう。
キスだったらまだしも、俺が逞し過ぎる最上級の男を押し倒す……なんて。
やはりその画が想像できず、俺は困惑してしまう。
「言ってごらん?」
俺の前髪の端の一番長いところを翔琉は丁寧に耳へと掛けながら、今にもキス出来そうな距離まで顔を近付けると、優しくそう囁いた。
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