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俺の鼓動は、今すぐ飛び出しそうな程激しく揺れて全身に緊張が走った。
同時に、“キス”さえ意識して行おうとすると、酷く恥ずかしいことに気が付いてしまう。
「どうした?」
俺の緊張を分かっていて、わざと翔琉は余裕の表情を浮かべ意地悪く尋ねる。
つい悔しさを感じた俺は、自身を奮い立たせ勢い良く唇同士を合わせる。
その瞬間、唇を合わせたつもりが勢い余ってがちっとお互いの歯が剥き出しでぶつかってしまう。
クスリと翔琉は笑って、
「情熱的だな」
と、失笑しながら皮肉めいた言葉を告げる。
「下手くそだな」とバカにされたような気がして、俺はついムッとなってしまう。そこから自身の本気を見せようと、翔琉の両肩を掴むや否や、俺は彼に折り重なるように共にふかふかのリネンの上へとダイブする。
方法はどうあれ、取り敢えず俺が押し倒したこの状況に、翔琉は面白そうに口の端を上げた。
「若さ溢れる押し倒し方だな。颯斗は、俺にがっついて欲しいということか」
俺にのしかかられていた翔琉は、「勉強になったぞ」とわざとらしく告げる。
「ち、がっ……それはっ」
誰も押し倒したことがないから――。
そう言いかけた俺に、翔琉は更に煽るような言葉を続けた。
「――で、その先は?どうやって俺の浮気を調べるんだ?押し倒しただけじゃ、調べられないぞ」
俺はこの言葉の意味に、鼓動がより激しく、より早くなるのを感じてしまう。
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