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「あー、でもさ。颯斗は一人っ子だけど、周りに兄、姉みたいな人はいるよな」
心織からの言葉に、俺は首を傾げる。
さすがに、翔琉と一緒にいるところは目撃されていないはずだ。
否、たとえ目撃されていたとしても俺と翔琉とでは、明らかに兄弟だとは見えないだろう。
自身の周囲にいる歳上の男性で“兄”らしい人物。
少し思案して、翔琉の親友で元モデルの久我原桜雅を思い描く。
いつも優しくて、翔琉と何かあるとその仲介役も努めてくれる、しかも頭も良い、まさに絵に描いた理想の兄のようだ。
桜雅のような兄がいたら、どんなに良いだろうか。
実際に桜雅は、親の再婚で兄になったと話していた。
弟とはいくつ年が離れているのかは知らないが、きっと良いお兄さんをしているだろう。
だがしかし、心織は俺の予想とは違う人物の名を挙げた。
「ほら、紫澤先輩とかさ! どこへ行くにも着いて来て保護者みたいでさ。花凜ちゃんも、同い年だけど颯斗にだけは優しくて世話焼くし……姉みたいだろ?」
そっちの方が羨ましいな、と心織は呟く。
――ああ、さすがに世の中の弟とは兄とキスはしないだろうけど。
過去、紫澤にキスされたことを思い返し、独り俺は困惑する。
まあ、でも。
桜雅も紫澤も、もし自分の兄であればどちらも普通に嬉しい。
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