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良いお年を♡
※シリーズ第18弾「愛されポインセチアが花咲く夜」の後のお話しです。
「今年もお世話になりました」なんてバイト先の店長たちと言葉を交わした後、俺は独り帰路に着いていた。
今日、俺の相棒である自転車は手許にない。
そう。これから港区にあるタワーマンションへ。翔琉の家へ帰るからだ。
――すっかり今年は、翔琉の家へ帰ることに馴れてしまったなあ。
俺、高遠颯斗はしみじみとそんなことを思いながら、いつもより人気が少なくなった晦日の街を歩いていた。
今夜、翔琉は正月休みの為、ドラマの撮影先である九州から東京へ帰って来る予定だ。
共に年末年始を過ごそうとクリスマスに告げられ、即同意した。
以前であれば、とても考えられなかった心境の変化だ。
この一年、世の中の情勢的には色々なことがあった。
だが俺にとっては、結果、翔琉のことをより大切だと素直に想えるようになった一年となった気がする。
男同士だとか。
翔琉が超人気俳優だとか。
将来性のない関係だとか。
色々と悩みは尽きない関係だが、それでも翔琉が俺へ寄越す大きな愛は、それをも全て帳消しにしてしまう。
それ程、大切に愛されていることを日々実感している。
ようやくこの頃、深く考える癖が改善してきているように思う。
――まさか男に愛されて、嬉しいと思ってしまう日が来るとはなあ。
まぁ、翔琉だから――ってことはあるよな。
翔琉以外の男じゃ、やっぱりキモイと思うし。
予想もしていなかった未来がここにあることを改めて驚きつつも、無意識に翔琉のことを意識し、頬を紅く染めた。
「さ、翔琉が帰って来るまでに早く買い物を済ませよう」
二人分の正月の買い物をして、俺は馴れた手付きで厳重なセキュリティをくぐり抜け、翔琉の部屋の前までやって来る。
ドアのロックを解錠しようとしたところで、突然それは開いた。
「颯斗、お帰り」
「――え、翔琉?! なんで?!」
目の前のドアが開き、いないはずの家の主が俺を出迎えたのだ。
「驚く颯斗の顔が見たくて」
そう言うなり、翔琉は荷物ごと俺を強く抱き締める。
「……」
予期せぬ出来事に俺は言葉を失ったが、サプライズの出迎えが嬉しくて、じっと上目遣いに翔琉を見つめた。
「ナニソレ。颯斗、誘ってるのか?」
翔琉の言葉に、途端、顔を大きく赤らめる。
それが答えだと察した翔琉は、ニヤニヤと意地悪そうな笑みを浮かべ、そのまま俺を肩へひょいと軽々担ぐとベッドルームへ直行した。
*****
「今年もお世話になりました。それではこれから俺たち二人は晦をするので、どうぞ来年も俺と颯斗を宜しくお願い致します! 良いお年を!」
「翔琉、一体あなたどこへ向かって言ってるんですか? 人を裸にしておいて!」
「おっと、颯斗の美しい裸は俺だけのものだからな」
そんな感じで、大晦日も相変わらずイチャイチャして白濁まみれで過ごすようです。
今年もお読み頂き、ありがとうございました。
来年も宜しくお願い致します!
緋芭まりあ
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