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すると翔琉に劣らずの綺麗で鋭いグレーの眼光が、強く颯斗へ訴えかけた。
「ボクじゃない。オレだ。龍ヶ崎翔琉、本人だ」
「翔、琉?」
「そうだ。俺だ」
はっきりと迷いなく主張した少年はテノールで告げると、視線を合わせていた颯斗の頬へそっとキスをした。
「わあ!」
驚いた颯斗は、反射的に一歩うしろへ大きく後ずさる。
「颯斗、驚きすぎだろう。俺たち、いつももっと濃厚なキスをするのに」
唇を真一文字にし、少年は怪訝そうな表情を浮かべて颯斗との距離をつめた。
颯斗も負けじと後ろへ下がる。
けれど、下がりすぎてドアへ背がぶつかり、追い詰められてしまう。
十歳くらいの少年だというのに、威圧感がハンパない。
「いや、いや、いや。ちょっと待ってください!」
その迫力に、自然といつも翔琉へ接するような敬語モードになってしまう。
「待って、ってなにを待つんだ? 俺たちは恋人同士だろう?」
少年はドアへ壁ドンをした。
相手は少年だというのに、不覚にも颯斗はドキッとしてしまう。
いや、いや、いや。
相手は少年ですけれど?
翔琉に顔が似ているからといって、なにを一瞬どきっとしたんだ?
というか、家へ呼び出した張本人はどこへ?
自身の変化に焦っていると、目の前の少年は険しい表情を浮かべ、ふうとため息をつき頭を垂れた。
「……ダメだ。やっぱり俺のほうが小さいと恰好がつかないな」
項垂れるように翔琉は踵を返す。
心なしかその後ろ姿は、大きく項垂れているように見えた。
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